相続に必要な書類の内容から取り方まで|戸籍謄本、抄本、除籍謄本…

「相続の手続きをしたいけど、なんの書類を用意すればいいの?」

「謄本や抄本など、名前は聞いたことはあるけど、それがなんなのかわからない…。」

こんなお悩みを解決するために、この記事では相続の手続きに必要な書類や、それぞれの書類の内容・入手方法をわかりやすくご説明します!

1.相続手続きに必要な書類|戸籍謄本など

1-1.相続の手続きでは書類の提出が必要

被相続人の死後、遺産の名義を変更するとき(不動産の相続登記、預貯金の名義変更など)や、相続税の申告をするときなど、相続の手続きにおいては、

①被相続人が死亡していること
②相続人はだれか

を書類によって証明する必要があります。

1-2.具体的に必要とされる書類は?

そこで具体的に必要となる書類は、相続人および被相続人の

  • ①戸籍謄本・抄本
  • ②改製原戸籍謄本・抄本
  • ③除籍謄本・抄本

の3つが基本です。

特に②③はあまり聞き慣れない言葉ですし、どんな書類で、どこで手に入れればよいのか分からない方がほとんどだと思います。
以下で分かりやすくご説明していくので、ご安心ください。

1-3.「謄本」と「抄本」のちがい

はじめに、「謄本」と「抄本」のちがいについておさえておきましょう。

謄本」とは、ある戸籍に所属している人全員について記載された書類のことです。
これに対して「抄本」は、ある戸籍に所属している人々のうち、特定の人について記載された書類のことです。

「謄本」は全員について、「抄本」は一部にフォーカスした書類なんだなあ、という風に理解していただければ大丈夫です。

現在は「全部事項証明書」「一部事項証明書」に

平成6年の法改正後、戸籍情報の媒体は従来の紙から電子データへと変化し、現在ではほとんどの市町村で電子化が完了しています。
これによって電子化以後の戸籍については、「謄本」「抄本」は、それぞれ「全部事項証明書」、「個人事項証明書」に正式名称が変わりました。

なお、戸籍に記録された事項中の一部の事項だけを証明するものは「一部事項証明書」といいます。

本記事では、便宜上、皆さんも馴染みのある従来からの「謄本」「抄本」という言葉を使います。

2.相続関連書類の入手方法と場所|戸籍謄本など

さて、相続で必要な3つの戸籍関連書類がどんな書類なのか気になるところですが、そのまえに、書類の入手場所についてお教えしておきます。

2-1. 相続関連書類は本籍地の役所に申請する

戸籍に関する事務はすべてその本籍地の市町村が取り扱っているため、相続関連の書類を手に入れるためには、戸籍の本籍地である市町村から入手しなくてはなりません。

そのため、結婚や転居で本籍地に変更のあった方が以前の戸籍謄抄本を入手するためには、変更前当時の本籍地の役所の窓口に申請する必要があります。
印鑑と身分証明書(免許証など)を持っていきましょう。
相続で必要な場合は「亡くなった方の出生まで遡る戸籍関連書類をすべてください」と言えば案内してもらえるはずです。途中で本籍地が変わる場合は教えてもらいましょう。

直接役所に行くのが面倒くさいという方は、郵送での申請も可能です(同条第3項)。
本籍地の市町村のサイトなどに申請方法が書いてあります。

さらに、電子媒体で管理されている戸籍については、コンビニの端末で入手できます。
ただし、この「コンビニ交付」で入手するには、次の条件が必要です。

  • マイナンバーカードまたは住民基本台帳カードを持っていること
  • 本籍地の市町村がコンビニ交付サービスに対応していること
  • 事前に、本籍地の市町村に申請して利用登録をしていること

【参考】総務省:コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付(本籍地の戸籍証明書取得方法)

2-2. 2024年には最寄りの役場ですべての書類を入手できる?!

令和元(2019)年5月24日、「戸籍法の一部を改正する法律」が可決し、コンピュータ化された以後の戸籍謄抄本・除籍謄抄本は、本籍地に限らず、最寄りの市町村で入手できることとなりました(改正法120条の2)。この新制度は、2024年に施行される見通しです。

3.戸籍謄本・抄本とはなにか

それでは、書類の取り寄せ方がわかったところで、いよいよ①~③の書類の内容についてご説明いたします。まず、①戸籍謄本・抄本からです。

戸籍謄本とは、ある戸籍において、ひとりひとりの構成員が何者であるか、全員の関係を明らかにした書類のことです。

もっと詳しくいうと、戸籍謄本には、同一戸籍に所属する全員について、戸籍の内容すべて(以下の項目)が記載されています。(戸籍法第13条)。

・氏名
・生年月日
・戸籍に入った原因と年月日
・実父母の氏名と実父母との続柄
・養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
・夫婦については、夫又は妻である旨
・他の戸籍から入った者については、その戸籍の表示
・その他法務省令(戸籍法施行規則)で定める事項

これに対して、「抄本」は、一部の人に関する記録でしたね(1-3.参照)。
つまり、戸籍抄本は、ある戸籍に属している人々のうち、特定の人についてのみの戸籍の内容を記載した書類です。全員について記載されている戸籍謄本とは、ここが違います。

4.改製原戸籍謄本・抄本とはなにか

4-1.「改製」は戸籍の形式が変わること

戸籍の歴史は長く、その記載方法は、戸籍法の改正によってこれまでに何度も変更されています。このように戸籍の形式が変わることを「改製」と呼びます。

戸籍が改製された場合に、改製前の戸籍を「改製原戸籍」と呼びます。読み方は、「かいせいげんこせき」、「かいせいはらこせき」のどちらでもかまいません。

4-2.改製原戸籍謄本・抄本に書かれていることはなにか

戸籍の改製は書式を変えるだけで、改製前と後で、基本的に内容は同じです。
ただし、改製前の記載事項で、改製後の戸籍に転記されないものがあります。

例えば、かつてその戸籍に属していたとしても、改製前に死亡したり結婚したりして、その戸籍から外れた人については、新しい戸籍には載りません。あくまで改製時点で在籍している人だけについてのみ、情報が転記されます。

したがって、被相続人の家系の歴史を漏れなく証明するためには、必ず改製原戸籍を入手する必要があります。

改製原戸籍にも、記載内容すべてのコピーである改製原戸籍謄本と、一部の者だけに関する記載内容のコピーである改製原戸籍抄本があります。

5.除籍謄本・抄本とはなにか

5-1.除籍とはなにか

一枚一枚の書類である戸籍は、市町村によって、「戸籍簿」という帳簿にまとめられます。
しかし、戸籍の構成員が婚姻・離縁・死亡などよって外れていき、やがて誰も所属しなくなると、その戸籍は「戸籍簿」から「除籍簿」という別の帳簿に移されます。
この除籍簿に移された戸籍を、除籍といいます。

※なお、戸籍に記載されている構成員の1人が、婚姻・離縁・死亡などによって、その戸籍から「除かれること」も除籍と呼ぶことがあります。実務では頻繁に使われているものの、本来は間違った使い方です。

5-2.除籍謄本・抄本に書かれていることはなにか

つまり、除籍謄本・除籍抄本とは、「除籍=除籍簿に移された戸籍」のコピーのことです。
除籍謄本・除籍抄本には、その戸籍に属していた各構成員が、その戸籍に入ってから外れるまでの身分関係が記載されています。

除籍にも、記載内容すべてのコピーである除籍謄本と、一部の者だけに関する記載内容のコピーである除籍抄本があります。

6.(参考)戸籍謄本等を入手する際には、ついでに戸籍の附票ももらおう

6-1.戸籍の附票とは

戸籍の附票とは、「住所」に関する書類です。
戸籍に記載されている人が、その戸籍に入ってから外れるまでの間の住所が記録されており、戸籍の本籍地と住所を結びつける役割を果たしています。
戸籍の附票には、住所以外にも、戸籍の表示、氏名、住所を定めた年月日が記載されています(同法第17条)。
これらは、住民票の記録に基づいて記載されるため、要するに戸籍の附票の記載内容は、住民票と同じと考えて差し支えありません。

6-2.戸籍の附票は必須ではないが、あると便利

戸籍の附票は、相続の手続きにおいて必ずしも必要ではありません。
しかしながら、連絡先のわからない相続人に連絡をとったり、血縁関係者を調べるときなど、相続に関連する書類を収集する段階で役に立つことがあります。

※ただし、遺産分割調停申立ての際などには、関係者の住所を明らかにする書類が要求されるため、このような場合では、附票あるいは住民票も必ず必要になります。

6-3.戸籍の附票は戸籍と一緒に管理されている

戸籍の附票は、その戸籍の本籍地の市町村で作成・管理されているため、戸籍謄本等と同じ役所で取得することができます(同法第16条)。
戸籍と別に住民票を取得するのは二度手間になるので、住所を明らかにする必要があるときは、戸籍謄本等と同時に戸籍の附票も取得しておきましょう。

7.相続関連書類まとめ

今までご説明したことを、以下の表にまとめました。

書類の名前 書類の内容 手数料※
戸籍謄本
(〃全部事項証明書)
ある戸籍に在籍する全員についての戸籍情報のコピー 450円
戸籍抄本
(〃一部事項証明書)
ある戸籍に在籍する一部の個人についての戸籍情報のコピー 450円
改製原戸籍謄本
(〃全部事項証明書)
改製前のもとの戸籍に記載されている全員についての情報のコピー 750円
改製原戸籍抄本
(〃一部事項証明書)
改製前のもとの戸籍に記載されている者のうち、一部の個人についての情報のコピー 750円
除籍謄本
(〃全部事項証明書)
除籍簿にうつされた戸籍に在籍していた全員についての戸籍情報のコピー 750円
除籍抄本
(〃一部事項証明書)
除籍簿にうつされた戸籍に在籍していた者のうち、一部の個人についての戸籍情報のコピー 750円
戸籍の附票 戸籍に記載されている個人の住所履歴
(記載内容は住民票と同じ)
300円

※ 手数料は窓口で取得する場合です。市区町村によっては、自動交付機が設置されていて料金が異なる場合もあります。

8.まとめ

相続の手続きには、基本的に戸籍謄本[抄本]、改製原戸籍謄本[抄本]、除籍謄本[抄本]が必要です。

法改正によって、今後は、戸籍関係資料の入手は利便化する見通しですが、現状ではまだ手間がかかります。
相続の手続きで、たくさんの書類の入手に困っている、どのように取り寄せれば良いのか不安であるという場合は、気軽に弁護士の力を借りましょう。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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